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月別アーカイブ: 11月 2016

ケララ協同病院連盟のパドマナブハン会長の報告です。首に巻いているのは、歓迎などの意味を持つ「カダ」です

ケララ協同病院連盟のパドマナブハン会長の報告です。
首に巻いているのは、歓迎などの意味を持つ「カダ」です

第19回APHCO(アジア・太平洋地域保健協同組合協議会)理事会の報告の続きです。

各国からの報告(カントリー・リポート)のいくつかを紹介したいと思います。2017年の第20回APHCO総会はインドのムンバイで11月に開催される予定です。インドからの報告を紹介します。

まず、インド・ケララ州のケララ協同病院連盟会長のパドマナブハンさんの報告です。

インドでは、主だった町や都市部には民間組織や慈善団体による専門病院や総合病院があります。政府部門も、地域の保健所など医療分野で重要な役割を担っています。また地区病院、県立病院や医科大学も、インドの様々な州で政府が運営しています。

しかし、農村部に住む人々の大半が、十分な医療を受けられていません。農村部では経営状況が厳しいため、民間部門はそこでの医療提供に興味を示しません。政府部門も財政危機のため、農村部貧困層の医療ニーズへ応えられませんでした。このためインドでは、貧困層の医療ニーズが高まっています。

インド憲法では、健康は州の問題であるとされています。したがって各州にはそれぞれ独自の医療提供システムがあり、公共部門も民間部門(営利・非営利含む)も活動を行っています。州にはそれぞれの医療システムを機能させる責任がありますが、連邦(中央)政府が担う役割もあります。具体的には、政策決定、計画、指導、支援、評価、様々な県保健局の業務調整、国のプログラムを実施するための資金提供が挙げられます。

後ろの列が理事会参加者。前の列が会場設営・運営で協力いただいたフェクト・ネパールのみなさんです

後ろの列が理事会参加者。
前の列が会場設営・運営で協力いただいたフェクト・ネパールのみなさんです

全国の健康政策では、健康関連のあらゆる活動で民間部門の参加を歓迎しています。この政策ではまた、民間保険の設立も奨励しており、これは民間医療保険パッケージの下での二次・三次部門のカバー範囲拡大を目指したものです。

インドでは民間医療提供者への依存度が高まっており、現在は民間部門が外来サービスの78%、入院サービスの60%を占めています。民間医療提供者の中には、世界クラスのサービスを外国人やインド人富裕層へ提供することで医療ツーリズムを促進する、民間病院も含まれます。

近年では公的な投資や支出が減少しているために、インドの大半で医療にアクセスしにくい状況が見られます。その結果、人々は民間部門を使わざるを得なくなり、民間施設の利用者やサービスが急速に拡大しています。

(次号に続く)

20161125_aphco1

会場手配、設営、運営で、
フェクトネパールのみなさんにお世話になりました

11月13日(日)9:30から、カトマンズ市内のシャングリラ・ホテルで第19回APHCO(アジア・太平洋地域保健協同組合協議会)理事会が開催されました。最初にホスト国のネパールのフェクト・ネパールを代表して、プラダン先生から、ネパール地震に対する世界からの支援へのお礼と、歓迎のあいさつがありました。

私は、APHCO会長として開会あいさつを行いました。

初めに、ICA(国際協同組合同盟)の保健協同組合の組織であるIHCO(国際保健協同組合協議会)のグイザード会長の突然の死去に対して黙とうささげたのちに、以下のように述べました(大要)。

2015年4月25日の地震発生から約1年半が経ちました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた皆様にお見舞いを申し上げます。

また、現地において懸命に救助活動、医療活動をされたphect-NEPALの皆さんに改めて敬意を表します。そして、phect-NEPALの皆さんが、2016年4月14日、16日に連続して発生した熊本地震の被災者にお見舞いと義捐金をお送り下さったこと、並びに、今回の理事会開催を引き受けて下さったことに心より感謝申し上げます。被災当事国として義捐金に御礼申し上げるとともに、現地被災者の健康回復に役立てることを報告申し上げます。

2015年に国連総会は、国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals (SDGs))の3番目の目標として、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」と謳っています。

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席についている人は、左から、デシュムク医師(インド・ムンバイ)、髙橋医師(岡山医療生協副理事長)、サイード医師(マレーシア)、プラダン医師、私、通訳のシャヒさん、右端がパドマナブハンさん(インド・ケララ)です。
背後にいるのは運営にご協力いただいたフェクト・ネパールのスタッフです。

ICAは、国連総会で採択された、SDGsの実践や貢献に関する活動の進捗状況を報告することを呼びかけています。

アジアの保健協同組合は、健康づくりの分野で重要な役割を果たしています。そして、その呼び掛けに応え、SDGsに貢献できる強い力を持っています。

今週インドで開かれるICA-AP総会では、その点を強調し、ICAに加盟しやすい会費設定を呼び掛けたいと思います。

TPP(環太平洋パートナーシップ)協定や安全保障をめぐり、各国の意見が一致しない問題があります。協同組合の価値と原則に基づいて、そうした問題を解決していきたいと思います。

(次回に続く)

先週は、12日(土)に成田からネパールのカトマンズに飛び、APHCO(アジア・太平洋地域保健協同組合協議会)の第19回理事会に出席、16日(水)にインドのニューデリーに移動、第12回ICA-AP(国際協同組合同盟のアジア太平洋地域)総会に出席、APHCO会長として発言を行いました。

しばらく、この話題を取り上げたいと思います。

会場となったホテルの中庭です。このホテルはフェクト・ネパール発足時の会場となったホテルだそうです

会場となったホテルの中庭です。
このホテルはフェクト・ネパール発足時の会場となった
ホテルだそうです

香港経由で12日の21時半頃(現地時間。日本では午前1時前)に着陸、荷物が出てくるのに少し時間がかかりましたが、フェクト・ネパールのプラダン先生とスーマンさん(第828回 9月20日付参照)と、先乗りしていた医療福祉生協連の東久保専務の出迎えを受けました。

カトマンズは16℃で結構暖かくて助かりました。

ホテルの車で移動、13日(日)から始まる、第19回AOHCO理事会の準備の話し合いののち、とりあえず寝ることにしました。といっても、日本とネパールの時差は3時間15分。ネパールの0時(24時)は日本の3時15分ですから、すぐに睡眠に着くことができました。

(次回に続く)

香川県保険医協会報の「社保のページ」に、診療報酬に係る内容を連載しています。「飛来峰」で掲載した内容と重複する内容が大半ですが、再掲します。

2016年7月号に掲載した内容です。

14年4月改定で「かかりつけ医」機能の評価として、主治医を明確にする「地域包括診療料」が導入されました。

高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち2以上の疾患を有する患者が対象で、再診料や検査、レントゲンなどの画像診断、訪問診療などが包括化される一方、1カ月に約1万5千円の収入になるというものでした。

診療所の場合、この点数を算定するには、3人以上の常勤医師が勤務、24時間電話対応が可能、在宅療養支援診療所であることが要件で、同一医療機関でも主治医以外の医師が診察した時には算定できないなどの条件があり、14年7月時点の届け出が122施設、15年7月には93に減少していました。

今回、診療所の施設基準で常勤医師が2名以上に緩和されるなどの変更がなされました。病院の施設基準では、2次救急指定病院、救急告示病院等の要件が削除されましたが、どこまで広がるかは疑問です。

14年4月改定で新たに設定された「地域包括診療加算」は、診療所しか算定できないもので、健康相談をしている、24時間対応をしている薬局と提携している、敷地内禁煙である、介護保険の相談に乗る、主治医意見書を記載、在宅医療を提供し24時間電話対応をするか在宅療養支援診療所である、などの施設基準があり、上記4疾患のうち2以上の疾患を有する患者が対象で、1回の診療のたび200円が加算されます。

今回改定で、地域包括診療料の施設基準と同じく常勤医師の配置要件が緩和されました。また、4疾患の疾患が重複しなければ、複数の医療機関でも算定が可能になりました

香川県保険医協会報の「社保のページ」に、診療報酬に係る内容を連載しています。「飛来峰」で掲載した内容と重複する内容が大半ですが、再掲します。

2016年5月号に掲載した内容です。

第840回(11月4日付)では、湿布薬の処方枚数制限について触れましたが、投薬に関しては、これ以外にも変更があります。

これまで投薬日数については、発売1年以内の新薬、麻薬、ベンゾジアゼピン系薬剤のように投薬日数制限のある薬剤を除き、「予見することができる」範囲で処方可能でした。要するに医師の判断でいくらでも処方が可能でした。今回の改定で「30日を超える長期の投薬を行うに当たって」医師の判断が必要と、原則30日投薬となりました。もちろん、患者への説明とカルテ記載がきちんとしていれば、30日を超える投薬が可能です。

また、「分割指示に係る処方せん」の交付が可能になりました。例えば、90日分処方して、処方せんの備考欄に「3回に分割、1回あたり30日分」と書けばよいということなのですが、30日たっても患者が取りに来なかった場合どうするかは明確ではありません。そもそも30日後にきちんと取りに来ることが想定できる方なら分割の必要はない訳ですから、果たして定着するかどうかは疑問です。

向精神薬の多剤投与に係る減算規定が変更になりました。抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬などの処方が多い場合(向精神薬多剤投与)、処方料が42点から20点に、薬剤料が80%に減額、処方せん料が68点から30点に減額となります。この基準が抗うつ薬、抗精神病薬は従来4種類以上で適用されましたが、これが3種類以上になり基準が厳しくなりました。

さらに、抗精神薬多剤投与に係る報告書を3カ月に1回地方厚生支局等に届けでる必要があります。

10月27日に厚労省老健局振興課は、介護保険最新情報Vol.568として、「介護予防・日常生活支援総合事業の円滑な施行について」という文書を発出しました。

2015年4月の介護保険改定で、要支援と判定されると、訪問介護と通所介護の利用ができなくなり、市町村の「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」(新しい総合事業)で対応することになります。この件は、第713回(2015年4月7日)で詳しく触れています。

この当時から、「従来の施設基準・人員基準等は廃止され、自治体により対象やサービス内容が異なることになる。このサービス事業には予算上限が定められますから、余力がなければサービス内容は不十分になる」と指摘しておきましたが、現実的に各地で「安上がりサービス」が横行することになりました。

そこで、今回厚労省は「地域の実情に応じ、ふさわしい単価を定める必要がある」としました。また、「サービス事業者の採算に影響を与えることから、関係機関と十分な協議を重ねるよう」求めました。同時に「地域において必要と見込まれる事業量の確保に努めること」としています。

安上がりの単価設定では事業者が事業そのものを廃止する可能性を厚労省が自ら認めたことになります(まあ、最初から分かっていたことですが)。

いずれにしても、現実的な価格設定で、必要なサービスが提供できる仕組み作りが大事だということになります。もっと言えば、介護保険外しをやめて、元に戻せばよいと思います。

2016年11月5日

TPP法案採決強行に抗議する

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 藤原 高明

11月4日(金)衆議院環太平洋経済連携協定(以下、TPP)特別委員会は、TPP承認案及び関連法案の採決を強行しました。この採決強行に医療福祉生協連は怒りを込めて抗議します。

TPP承認案と関連法案の対象は、農業分野に留まらず医薬品価格や国民皆保険制度への影響も指摘され、医療福祉生協の事業や活動に大きな影響を及ぼすものです。国民生活に深くかかわる問題でありながら、この間の国会討論では食の安全や農業所得補償、企業が国を訴えることができるISDS条項等について十分な審議が尽くされたとは言えません。むしろ、国民の不安は高まるばかりです。

今回の採決強行は、TPPの中心テーマである農政を担当する山本農水相の、強行採決や利益誘導を容認するかのような軽率な発言に対し、その辞任を求める野党の声を無視する中で行われました。強行採決をめぐる国会答弁で何の根拠も示さず「わが党においては結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」との発言を繰り返した安倍首相は、自らの発言さえ反故にする今回の事態に重大な責任があります。

医療福祉生協連は、TPPに反対する広範な人びととともに参議院での徹底審議を求め、TPP承認案及び関連法案の廃案に向けて全力でとりくむものです。

以上

香川県保険医協会報の「社保のページ」に、診療報酬に係る内容を連載しています。「飛来峰」で掲載した内容と重複する内容が大半ですが、再掲します。

2016年4月号に掲載した内容です。

4月からの診療報酬改定の特徴点について、社保のページで解説していきたいと思います。

最初は、「湿布薬」の処方枚数の制限についてです。これは、「一度に多量に処方される湿布薬が一定程度あり、残薬削減等の保険給付適正化の観点」から導入されたものです。

貼り薬すべてではなく、鎮痛・消炎を目的とするいわゆる「シップ」が対象で、麻薬、降圧効果や気管支拡張効果を持つもの、認知症の治療や狭心症等に用いるものは対象ではありません。

1回の処方につき、各種湿布を合わせて70枚までとなりました。70枚を超える場合はその理由(医学的根拠)の記載が必要です。1回の処方が何日分に当たるかも記載が必要になります。

これまで、処方日数の制限が撤廃されてから(理論的には)何枚処方してもよかったのですが、それなりの理由が必要となりました。

院外処方の場合、処方箋やレセプト(診療報酬明細書)にその理由の記載が必要ですから、面倒になりましたが、逆にいうと明確な医学的根拠・理由があればよい、ということになります。

厚労省によれば、国費ベースで約30億円の削減が可能とされます。

これは1回あたりの処方枚数制限ですから、1カ月当たりの処方枚数に制限はありません。しかし、3月4日に開催した地方厚生局や都道府県の担当者向けの改定説明会で、「個別の患者における湿布薬処方の必要性について、審査機関が審査することを排除しているわけではない」と付け加えており、審査で査定される可能性は厚労省も認めていますから、事実上の処方制限になったといえます。

TPP(環太平洋経済連携協定)について、衆院TPP特別委員会理事を務める自民党の福井照衆院議員は9月29日に、この国会で「強行採決と言う形で実現するよう頑張らせていただく」と発言し問題になりました。

しかし、国会の情勢はこの発言通りに、自民党・公明党は、強行採決を狙っているようです。NHKは「与党側が1日午後採決を行いたいと提案したのに対し、民進党などは『さらに十分な審議が必要だ』として拒否」と、採決が当然という立場で報道を行っていますが、これは許せない態度だと思います。

何より「のり弁当」(玉木衆院議員・民進)と評される黒塗り文書で、国会審議を乗り切ろうという態度はあまりに国民を愚弄したものだと言わざるを得ません。

TPPが発効したなら、この間取り上げてきた薬価の問題でも(オブジーボは国内企業の開発ですが)、海外の企業が、中央社会保険医療協議会で薬価を引き下げる日本の仕組みが、メーカーの企業利益を損なうと、訴えることが可能となることです。

高すぎる薬価が引き下げられることなく固定されるなら、日本の社会保険制度は崩壊します。TPPの承認は認めるべきではありません。