アメリカで最先端の患者の権利を調査研究してきました(第31回)

米国調査第31回です。 Northwest Health Care Center で理学療法士として働いている、市原さんのお話です。

リハビリ部門は地下室にあります。このあたりでは、この理学療法室は広い方で、たいていはここの半分くらいですから、そういう意味では恵まれているほうです。ただ、地下にあるので、ネズミみたいですね(笑)。

最近改築したのですが設計ミスで、理学療法室に作業療法用のADL施設(日常動作の訓練を行う施設)があります。キッチンも洗濯の設備もあります。作業療法室は日本と同じですが、これも設計ミスで、浴槽もあるのですが廃水が悪く、仕方がないので褥創の治療に使っています。

市原PTからの説明

市原PTからの説明

日本と違って、理学療法士が皮膚の下まで剥ぐことが出来るので、日本なら医師法違反ですが、こちらにきてからデブリードメント(傷ついた皮膚の処置)などの勉強を仕直しています。最初はこわごわやっていましたが、最近は大胆にやっています。

作業療法士の仕事の内容は日本と殆ど同じで、ADLの維持です。ライセンストOTと、医療上の評価はできませんが治療は出来る作業療法士の資格があります。理学療法士でも同じような仕組みです。

言語療法士も日本と同じで、高次脳機能障害と嚥下障害を対象にしています。ここの施設では、嚥下困難な人の治療の方が多いですね。アルツハイマー・ユニットもあるので、痴呆対応もあります。

常勤医はいなくて、10人くらいの非常勤の医師が対応しています。メディケアの必須条件で 30 日に1度、変化があってもなくても医師が見ないといけませんから、週1回か2回医師が見に来ます。後は、必要に応じて呼ぶ( on call )事になります。ナース・プラクティショナー(一定の治療が可能な資格を持った看護師)が処方したり、ナースと共に日常的な対応をする事になります。問題があれば救急車を呼び、心臓発作や失神などの意識障害に対応します。

この施設に入って来る人は、施設の側が病院に対してマーケティング(売り込み)をします。「うちではこんなケアをする」といって、施設の特色を売り込んでいて、それに応じて紹介されてくるので、問題があれば元の医療機関に相談します。医療機関は近隣、殆どDC内にあります。

注:米国の首都は「ワシントン」ですが、西海岸のワシントン州(シアトルが有名)と区別するため、「ワシントンDC」あるいは「DC」「 D.C.」と呼びます。D.C.は、The District of Columbia(コロンビア特別区)の略で、 クリストファー・コロンブス にちなんだ名です。

(次回に続く)